太古の昔、北米大陸は氷河に覆われていました。氷河は長い時間をかけて大地を削りながら流動し、残されたのは堅い岩と砂利のつもった荒野。
酸度が高くほとんどの植物が生き残れなかったこの不毛の地で、わずかに残った植物のひとつがワイルドブルーベリーです。豊かな栄養と味をもつこの果実を、先住民アベナキ族たちは食糧や薬として採取していました。
それから数千年、農家たちが守り続けてきたワイルドブルーベリーは、今なお北米に自生しつづけています。
ワイルドブルーベリーの収穫は2年に一度。栽培種よりはるかに手間がかかります。
自然体系を守るため、森を切り開くのは最低限にとどめ、地下に隠れている株が成長するのを待つだけで、まず10年ほどの歳月を見込みます。
野生種は新たに人の手によって植えつけることができないため、生産者はその広大な土地にある瓦礫や雑草を丹念に取り除いたり、ハチをもちこみ受粉を行うなど、自然な成長を妨げない範囲での目配りや手助けをします。
ほとんどの生産農家は、その土地と技術を代々受け継いでいる家族経営で、7月下旬〜9月上旬の収穫も家族総出。専用に開発した小型ハーベスターと、機械が入らないところは、伝統的な器具を使い、今でも腰をかがめて手摘みの作業です。
持続可能な農業を行うため、畑を2つのブロックにわけて1年交代で収穫を行っていることから、収穫が終わるとその畑は1年間休みとなります。
農作物の生産とは切り離せない農薬の問題。ワイルドブルーベリーの生産地では基本的には農薬は使用せず、深刻な害虫の問題があれば、政府に認定された研究者が病害と使用すべき農薬を特定して、必要な部分にのみ使うことが前提となっており、生産者が自由に農薬を購入して使用することはできない仕組みができています。収穫する年にあたるブロックでは農薬の使用はせず、休閑にあたっているブロックでのみ使用が認められ、刷毛で農薬を地面に塗るなど最小限の使用、および徹底的な管理が行われています。(これは通常の場合で、オーガニックの場合を除きます。)